熱海温泉 山田湯

熱海市には共同浴場が残っている。

市役所から南西へ10分ほど歩くと和田川と出合う。橋を過ぎ最初の枝道を右へ入る。坂道を100mほど登っていくと右斜めへ下る細い道がある。そのまま進むと民家とつながった浴舎が見える。




15時30分、鍵が開く。入ると番台が迎える。籠に料金を入れる。脱衣所には木製の棚、長椅子が置かれている。季節がら扇風機が回る。比較的広い空間だ。透明ガラス戸の向こうには浴室が見える。

右手壁に沿い浴槽、左手窓に沿い洗い場が配置されている。脱衣所、浴室とも長い年月を重ねてきたことが一目でわかる。昭和の風景が懐かしい空気を生み出す。




浴槽は幾度も補修がなされているようだ。大切に管理されてきたことが窺える。黒いタイルが淵を包み、内部は水色のタイルが貼られている。満たされる湯は透明で一切の色はない。臭いもなく特段の味も感じ取れない。湯口に取り付けられたホースは湯面下に伸び自由に湯量を調節できる。熱ければ加水も可能だ。



浴槽側の壁上部には富士山がタイルで描かれている。午後からの営業開始後、誰一人訪れることなく、壁の富士山を眺めながら贅沢な貸切の時間が過ぎていった。

入浴に際して浴場の方からは自由に湯を出して温度調整をしてよいと笑顔でアドバイスをいただいた。暖かい言葉が嬉しかった。道に迷い汗を流したどり着いた甲斐があった。




熱海市水口町にも2つの共同浴場、水口第一共同浴場、水口第二共同浴場が存在していたが、すでに閉鎖していた。共同湯の風情を今に残すのは山田湯のみと言えるのかもしれない。



写真はそれぞれ水口第一、水口第二共同浴場の今で、建物は残されていた。


熱海温泉 山田湯
静岡県熱海市和田町3-9
0557(81)9635
泉質不明
泉温不明
シャンプー類なし ドライヤーなし
内湯
300円
8:00~11:00・15:30~21:00
2016/7/31